普天満宮(ふてんまぐう)は、沖縄県宜野湾市普天間にある神社だ。
沖縄は元来日本ではないため、本土に比べるといわゆる寺社仏閣が少ない。
この普天満宮は宜野湾市で唯一の神社で、琉球八社の一つとして数えられている。
その昔、普天間の洞窟に琉球古神道神を祀ったことから普天満宮の歴史はなり、琉球国の尚金福王(しょうきんぷくおう)から尚泰久王(しょうたいきゅうおう)の頃(1450~60年)に熊野権現を合祀したと伝えられている。
御祭神は、熊野権現の伊弉冉尊(いざなみのみこと)、速玉男命(はやたまをのみこと)・事解男命(ことさかをのみこと)、天照大御神(あまてらすおほみかみ)、家都御子神(けつみこのかみ)、そして琉球古神道神である日の神、竜宮神(ニライカナイ神)、普天間女神(グジー神)、天神・地神・海神の11柱だ。
このたびの沖縄旅行で、普天満宮を参拝した。
それは宜野座から北谷への移動日で、沖縄バスの77番名護東線で延々と南下して北谷に向かう途中、「普天間」バス停で下車した。
普天満宮に行く前に、北谷方面に向かうバスを調べようとスーツケースに腰掛けて「普天満宮」バス停に貼られた時刻表を眺めていると、バス待ちをしているおばあさんが話しかけてきた。
「空港に行くの?空港に向かうバスはあっちよ」
いかにも旅行中というなりのためか、空港方面のバス停を丁寧に教えてくださった。
「いいえ、普天満宮に行きます」
「そう、荷物が大きいからね、歩道橋よりあっちの横断歩道を渡った方が楽よ」
「ありがとうございます」
普天満宮は道路の向こうにあり、左手の交差点の歩道橋を渡るほうが近いが、大きな荷物があるならと反対方向の右手の横断歩道を教えてくださったのだ。
横断歩道を使うと多少の遠回りになるけど、おばあさんの心遣いに感謝して素直に横断歩道を使う遠回りルートを辿った。
私は自動車の免許を持っていないので、この旅行ではもっぱら路線バスで移動していた。
大きな荷物を持っていたり、カメラを抱えているだけで「うちなーではない」と思われるのか、よく現地の人に話しかけられた。
バスの運転手さんに1度、バス停待ちで2度は話しかけられている。
私が特に話しかけたい人というわけでなく、田舎特有の他人に対する警戒心の低さのように感じた。
そういえば、バスの運転手さんはある程度長距離乗って降りる際、料金箱に入れたお金が10円足りなかったハプニングが起きた時には「いいですよ」なんて10円おまけしてくれたこともあった。
田舎の人の暖かさ、おおらかさに触れた旅でもあった。

入り口には、日本神道でお馴染みの鳥居。
略記。

鳥居をくぐり、階段を登って左手に手水舎がある。


狛犬はもちろん阿吽のシーサー。


拝殿。
中には通常の神社のように中央に鏡が祀られ、食物などがたくさん供えられていた。

この写真にあるように、中央の賽銭箱があるエリアの両脇に、また別の参拝?スペースがあり、それぞれ2人程が並べるくらいの広さで、おばあさんやおじいさん達がそこに座りこんで思い思いにお供え物などをしてお祈りをしているのが印象的だった。
これは本土の神社では見られない光景なので、古来から沖縄で行われてきた琉球古神道の神様へのお祈りの作法なのかもしれない。
熊野権現の合祀後、どちらの神様もこの拝殿で拝めるようにしてのことだろう。
拝殿の向かって左側に、祈祷受付やお守りなどを頒布している授与所がある。

御朱印と御朱印帳もあり、御朱印帳の表紙には沖縄の自然と拝殿が描かれていて素敵。
(間に合っていたので御朱印帳は見送った。)
御朱印と、夫への勝守り、自分のために絵馬型の願いごとを書いて身につけていられるお守りをいただいた。
さて、この普天満宮の最大の見どころは「普天満宮洞穴」だ。

普天満宮洞穴は、全長280メートルの鍾乳洞で、拝殿の向かって左奥にある。
普天満宮は、この洞窟内に琉球古神道神を祀ったことに始まるとされ、現在はその50メートルほどが無料で一般公開されており、宜野湾近郊の観光地としてガイドブックなどにも紹介されている。
(ちなみに、1991年8月1日付で宜野湾市天然記念物に指定されている。)
参拝を終え、さて洞穴を見てみようと思うも場所がわからず一旦境内の外に出てしまったが、「参拝進路」の通りに授与所の左奥に進んでみるとこのような入り口が。
「洞穴拝観は午前十時〜午後五時までです。洞穴拝観希望の方は、授与所で受付をしてください」という張り紙。勝手に入ってはいけない。

引き返して授与所で拝観希望を伝え、紙に住所氏名等を記載が済ませると、「では」と巫女さんが洞穴へ案内を開始してくれた。
先ほどの入り口の中は洞穴への通路になっていて、通路内には郷土の資料が展示されている。


通路のつきあたりの壁には小さな鳥居があり、巫女さんがお辞儀をしていたので倣った。
「ヘビ注意」の張り紙の左手には通路の出口、ここを抜けるとついに洞穴だ。
目の前にまず飛び込んでくるのが、真正面に開けた鍾乳洞と洞穴の中央にライトアップされている祠。
思わず「ワァすごい」と声が出た。
中央の祠周辺は特に明るく照らされているせいで、ただでさえ非現実的な光景がより幻想的で美しかった。

巫女さんの案内はここまでで、「まずはお参りしてくださいね、拝観が終わったら一言かけてください」と言い残して授与所に戻られるので、好きなだけ拝観させてもらえる。
洞穴の内部に入ると、当然ひんやりと涼しく気持ちがいい。
場所的にはそこそこ町中だが、その静かさは聖域ならではのものに思えた。
中央の祠を参拝。
周辺の鍾乳石にはしめ縄が巻かれていて、一層神秘的。
大きな鍾乳石にぐるりとしめ縄が巻かれている様は、大地の大地の力強さを物語るような威圧感すら覚えた。

祠の左には水を祀っているような場所。竜宮神と女神だろうか。

この中央のエリアの左右の奥は、数十メートルずつ鍾乳洞が続いていて見学することができる。
右奥のほう。

右奥のほうが少し長い。

つきあたり。

右奥から中央を見たところ。

通路の出入口を鍾乳洞側から見たところ。

「ここは、まさに琉球ネイチャーと日本神道のミクスチャーの象徴だ!」といたく感動して、この場にいるだけで何か特別で幸せで、もっともっと気が済むまでこの場にいたかったけど、先を急いでいたため後ろ髪を引かれる思いで後にした。
八百万の神々がいる日本。
神聖な場所はたくさん、場所によってはとても身近にあるけれど、琉球の気配が静かに息づいているこの普天間洞穴はとても特別で、次は誰かと一緒にこの独特な空気を一緒に分かち合いたいなと、そう強く思った。